奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~

 自分には、力なんてないと思っていた。
 だから、トーマスの力を借りて、帝国へと逃げてきた。
 ディーデリックも記憶を持って戻っているとは思わなかったし、帝国で、平穏に暮らしたい――それしか、考えていなかった。

(……ディーデリック様が、この国を獲るお手伝いをしてもよかったのよね)

 もし、エリュシアがもう少し強かったなら、この国に来た段階でそう考えていただろう。
 考え方が変わったのは、ディーデリックと再会してからだ。

「……たしかに、陛下は異常だわ」

 長い沈黙の後、ぽつりとシャリーンは口にした。
 彼女は、皇帝と面会する機会もあったのだろう。
 六十を過ぎてもなお、三十そこそこにしか見えない若々しさ。気力、体力。何かあるのだと思わざるを得ないのかもしれない。

「だが、彼には魔力が関係している気配は感じられなかった。だから、異様に思いながらも……深くは追及しないままだった」

 ぽつりと零した彼女は、もしかしたら後悔しているのかもしれない。
 そこに、ディーデリックはさらに言葉を重ねた。

< 89 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop