奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
自分には、力なんてないと思っていた。
だから、トーマスの力を借りて、帝国へと逃げてきた。
ディーデリックも記憶を持って戻っているとは思わなかったし、帝国で、平穏に暮らしたい――それしか、考えていなかった。
(……ディーデリック様が、この国を獲るお手伝いをしてもよかったのよね)
もし、エリュシアがもう少し強かったなら、この国に来た段階でそう考えていただろう。
考え方が変わったのは、ディーデリックと再会してからだ。
「……たしかに、陛下は異常だわ」
長い沈黙の後、ぽつりとシャリーンは口にした。
彼女は、皇帝と面会する機会もあったのだろう。
六十を過ぎてもなお、三十そこそこにしか見えない若々しさ。気力、体力。何かあるのだと思わざるを得ないのかもしれない。
「だが、彼には魔力が関係している気配は感じられなかった。だから、異様に思いながらも……深くは追及しないままだった」
ぽつりと零した彼女は、もしかしたら後悔しているのかもしれない。
そこに、ディーデリックはさらに言葉を重ねた。