奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「――聞きます」

 トーマスは、母のことをそれほど後悔していたのだ。危険があっても、これから先の話を聞くべきだと思う程度には。

「……エルフリーダから、手紙が届いたの。もっとも、私の手元に届くまでには、何年もたっていたけれど」

 母は、正規のルートではなく、非合法なルートを使ってシャリーンに手紙を届けたようだ。人の手から手へ、善意による手紙のリレー。
 善意に頼るしかなかったからこそ、シャリーンの手元に届くまで何年もかかってしまった。

「彼女は、自分が殺されると思っていたわ。正妃の手によって」
「なんてことだ! 私が、エルフリーダをあんなところに連れて行かなければ! 彼女は、きっと今でも……!」

 シャリーンの話を聞いたトーマスは、テーブルに拳を打ち付けた。彼がここまで、心情を見せるのは珍しい。いつも、やり手の商人らしくにこにことしていたから。

「トーマスさん。きっと、お母様は喜んでいたと思うの。だって、自分の作った魔道具を売り込みに他国に行けたのよ。そこまで評価されたら、きっと嬉しかったと思うの」

 魔道具師としてのエリュシアは、恵まれた立場にある。
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