領地開拓のために捨てられ令息を拾ったら、わんこ系イケメンになって懐かれました!
晩餐は緊張が漂うものとなった。
貧乏男爵で交遊の狭いアミュエルは、侯爵と食事を共にしたことなどない。
粗相のないように気を付けないといけない上、侯爵の出方が気になって仕方がないから、せっかくのごちそうを味わう余裕などない。
ハリアードの物腰は優雅で、軍にいるから無骨だろうという偏見は打ち壊された。
セシルが優しい月光なら彼は鋭い水のきらめき。穏やかなせせらぎに見えるのに、いざとなればなにもかもをも押し流す危険な強さを秘めているように見えた。
デザートを終えて食後酒を楽しんでいる最中、ようやくジェイソンは切り出した。
「どうして急にこちらへおいでになられたのですか?」
「手紙の返事を待たずに来訪した非礼は詫びを申し上げる。それだけ急いでいたのだとご理解いただけるとありがたい」
「もちろんです。しかしそれほど急ぐ用件とは……」
聞かれたハリアードは水色の瞳できりっとセシルを見た。
「単刀直入に言う。セシル殿がほしい」
アミュエルは凍り付いた。女を寄せ付けないと噂の氷の将軍がセシルを求めているということはつまり。
「まさかそんなご趣味が……」
思わず口から洩れていて、焦ってハリアードを見ると、彼は動揺に目を見開いていた。
「違う、そうではない!」
「実はセシル様って女の子!?」
「違います! 男です!」
「じゃあ、なんで……」
青ざめるアミュエルとセシルに、ハリアードは苦虫をかみつぶしたような顔をした。