領地開拓のために捨てられ令息を拾ったら、わんこ系イケメンになって懐かれました!
「王子と結婚して玉の輿に乗れとか言わないんだ?」
「あの王子は悪い噂があるからな」
 ジェイソンは不快気に眉を寄せた。

 きりりとしたハリアードとは対照的に、よく言えばにこやかに、悪く言えばだらしなく笑うウィルフレッド。パステルグリーンの生地に金の刺繍がごてごてしていて、垂らしたビーズがじゃらじゃらと揺れている。そこらの貴婦人よりもよほど派手だ。

「悪趣味だし、ないな……」
 アミュエルの言葉に、ジェイソンはうんうんと頷く。
「私は各所に挨拶に行って来るが、アミュエルはひとりで大丈夫か?」
「大丈夫よ。いってらっしゃい」

 父に小さく手を振り、アミュエルはリストに書かれている男性にダンスのお誘いに行った。
 だが、有望株はすでにパートナーが決まっていて、断られた。
 それだけでなく。

「あんな時代遅れのドレス」
「それでダンスを申し込むとか、身のほど知らず」
 誰とも知れぬ令嬢たちに笑われ、ため息をこぼした。

 いわばここは戦場。ドレスという甲冑に隙があれば叩きのめされる。それが常だとわかっていても、アミュエルは悔しさで歯噛みした。

 お母様の若いときのドレスをリメイクしたもので、そこらのものとは格が違うんだからね!
 そうは言っても、古いものは古い。

 ダンスを申し込んでくれる男性もいたので踊ってみたが、なんともぎくしゃくしたものになり、最後にはお互いが作り笑顔で解散となった。
「うまくいかないなあ。でも別に結婚しなくてもいいのよね、地属性を雇えれば」
 ため息をこぼしたときだった。
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