領地開拓のために捨てられ令息を拾ったら、わんこ系イケメンになって懐かれました!
「お前ごときが彼女に近付くな!」
 響いた声に、ざわめきが消えた。

 人々の視線を追うと、さきほど見かけたぼさぼさ頭の男性が困惑して立ち尽くしている。向かいにはきらびやかな衣装の女性とウィルフレッド。
 女性はなよなよと王子にすがりつき、その目は悲し気に伏せられていた。

 これは、とアミュエルは息を飲んだ。女にはわかるが男にはわからない、あざとい女性特有のあれだ。

「セシル・アンシュ・ポーランソン、お前は婚約者の立場を利用し、フォリーナ嬢に無体を働こうとした。その罪は大きい!」
 なにが始まったのか、と会場中の目が彼らに釘付けとなる。

「僕は、なにもしてないです」
 ぼそぼそとしゃべる彼に、アミュエルは目を細めた。無体という言い方からして、女性への不当な要求だろう。無気力そうな彼がそんなことをしたとも思えないが、こんな様子では無実を晴らすことは難しそうだ。

「黙れ! 今日この場で俺の名において貴様とフォリーナ嬢との婚約を破棄とする!」
「まあ、素敵!」
「きっぱり断罪なさるお姿が御立派だわ」

 うっとりとつぶやく令嬢たちに、正気か、とアミュエルは目を丸くする。一方的に公けの場で罵るウィルフレッドのどこが素敵で立派なのか。こんな恥をかかされて、断罪された彼の今後はどうなるだろう。
 彼はうなだれていて、表情はよく見えない。

「少しばかり魔力量が多いからといって、地属性ごときで美しいフォリーナ嬢と結婚するなど俺が許さん!」
 直後、アミュエルの目がきらっと輝いた。
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