領地開拓のために捨てられ令息を拾ったら、わんこ系イケメンになって懐かれました!
 虐待の末、彼は抗う気力をなくした。抵抗すればもっとひどい目に遭う、だったらおとなしくしていたほうがいい、と。
「なんてひどい! 無体はあっちじゃないの!」
 腹を立てるアミュエルに、セシルはぽかんとした。

「そんなふうに怒ってくれる人は初めてです。お父様からは我慢するようにと言われてたから……」
「父親の風上にも置けん!」
 ジェイソンの鼻息の荒さに、セシルの目尻が嬉しそうに下がる。

「婚約破棄を言い渡されたときは、正直ほっとしました。これで解放されるって。だけど追放も言われて、頭が真っ白になりました」
「ひどいわよね。自主退職扱いにしてやるって、結局、なにも証拠がなくて罷免できないから脅して退職させたわけでしょ」

「あの騒動で父親に縁を切られたんだよな。これからはうちで好きに過ごすといい。もちろん仕事はしてもらうが」
「ありがとうございます。あなたが父だったら僕の人生はもっと違ってたと思います」

「娘はやらんからな、そこだけは言っておく」
「わかってます。アミュエル嬢のような美しい方が僕と結婚なんて、ありえないと思ってますから」

「褒め上手ね」
 アミュエルがにこっと笑うと、セシルはうつむいた。

「アミュエル様に拾っていただけて本当に感謝しています。お役に立てるように全力を尽くします」
 ぼそぼそと語るその頬は、ほんのりと赤く染まっていた。
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