恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「眠れませんか?」

 耳に響く声に背筋がむず痒くなる。ただ頷頷くことしかできなくて、アルフレッドの胸に寄り添った。

「今日はラベンダースティックを作ったのですか?」
「どうして、わかるの?」
「全身からラベンダーの香りがします」

 耳元で応える声に、散々ラベンダーの香りで体を洗われたことを思い出し、頬がかっと熱くなった。

「……ラベンダーの香りは、嫌いだった?」
「そんなことないですよ。リリーにとても似合う香りだと思います」

 それは、どういう意味かと聞く勇気がもてずにもじもじしていると、手が離れていった。それを少し寂しく思っていると、ぐいっと体を引き寄せられ、両手で抱きしめられた。

「今日、なにか辛いことでもありましたか?」

 耳元で囁く低い声が、身体に響き渡るようだった。
 ぞくぞくと体を甘い痺れが駆けてゆく。

「メイドたちに、よからぬことを吹き込まれましたか?」
「それは、その……ヴァネッサ様の亡くなられたご子息、アルフレッドの叔父様のことを聞いたの」

 窺うようにしながら答えると、アルフレッドは静かにああと頷いた。当然だけど、アルフレッドも知っているのよね。
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