恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「ヴァネッサ様からお聞きしなければならないことを、メイドから聞き出すようなことをして、申し訳なく思って」

 アルフレッドの胸に寄せていた手を握りしめると、背中に回されていた彼の右手が私の髪を撫でた。

「それで落ち込んでいたのですか?」
「……え?」
「こんなに甘い香りをさせながら、どこか浮かない顔をしているから、怖がられているのかと思いましたが」
「怖がるって、アルフレッドを?」
「その……閨のことをいろいろ吹き込まれでもしたのかと」

 言葉を濁すアルフレッドは手を止めた。

「ち、違うわよ! 皆さん優しく励ましてくれるし……ヴァネッサ様には、孫が見たいといわれたけど」
「お祖母様がそんなことを?……口を出さないで欲しいといっておいたというに」
「あ、あのね、ヴァネッサ様は別に赤ちゃんを催促したとかじゃないの」
「しかし、孫が見たいといわれたのですよね?」
「それは……生きている間に抱きたいと」

 アルフレッドの口から小さなため息が零れた。
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