恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
白磁のティーセットを用意して戻ると、リリーは膝の上に本を広げて読んでいた。紅茶の香りに気付いたのか、目を細めて私を振り返った。
「今日の紅茶は、とても華やかな香り」
「お待たせしました」
紅茶とともに、小皿にのせたクッキーも添える。
「あら、このクッキー、スミレの砂糖漬けがのっているのね。可愛いわ」
「春に庭でとれたスミレだそうですよ。夏にはバラで作るのだと、お祖母様から聞きました」
「ヴァネッサ様が作られてるの?」
「メイドたちとの楽しみだそうですよ」
「そうなのね……今度、私も教えてもらわないとね」
リリーは少しだけ緊張して、だけど希望に満ちた微笑みを浮かべてクッキーを見つめる。それから紅茶を一口飲んで、幸せそうに吐息をついて「美味しい」と呟く。
その横顔を眺め、こうして二人でお茶を楽しむ何気ないひとときに感謝した。
「お祖母様と書庫へ行っていると聞いていましたが、用事は終わったのですか?」
「いけない! 紅茶が美味しくて忘れてしまうところだったわ」
ハッとしたリリーは、脇に置いてあった本を再び膝に広げた。
「今日は修道院に寄付する本の検討をしていたの。それで、過去、寄付をした本を教えてもらっていたんだけどね」
話ながら器用にページをめくるリリーは、途中で指を止めた。
「これ、その時に見つけた童話集なんだけど、ここを見て」
「……これは」
「あの枯れた遺跡と似ていない?」
示された一枚の挿絵には、アデルノアの塔によく似た建造物と、そこに入っていこうとする女の姿が描かれていた。
「今日の紅茶は、とても華やかな香り」
「お待たせしました」
紅茶とともに、小皿にのせたクッキーも添える。
「あら、このクッキー、スミレの砂糖漬けがのっているのね。可愛いわ」
「春に庭でとれたスミレだそうですよ。夏にはバラで作るのだと、お祖母様から聞きました」
「ヴァネッサ様が作られてるの?」
「メイドたちとの楽しみだそうですよ」
「そうなのね……今度、私も教えてもらわないとね」
リリーは少しだけ緊張して、だけど希望に満ちた微笑みを浮かべてクッキーを見つめる。それから紅茶を一口飲んで、幸せそうに吐息をついて「美味しい」と呟く。
その横顔を眺め、こうして二人でお茶を楽しむ何気ないひとときに感謝した。
「お祖母様と書庫へ行っていると聞いていましたが、用事は終わったのですか?」
「いけない! 紅茶が美味しくて忘れてしまうところだったわ」
ハッとしたリリーは、脇に置いてあった本を再び膝に広げた。
「今日は修道院に寄付する本の検討をしていたの。それで、過去、寄付をした本を教えてもらっていたんだけどね」
話ながら器用にページをめくるリリーは、途中で指を止めた。
「これ、その時に見つけた童話集なんだけど、ここを見て」
「……これは」
「あの枯れた遺跡と似ていない?」
示された一枚の挿絵には、アデルノアの塔によく似た建造物と、そこに入っていこうとする女の姿が描かれていた。