恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「リリー、どうしましたか?」
「レスターさんも一緒だったのね。お仕事のお邪魔かしら?」
「もう話は終わりました。レスターは丁度、退室するところでしたので気になさらず」
「はいはい、邪魔者は消えますよ」

 おどけるように笑ったレスターに手紙を戻すと、それではといって退室した。

「お茶を淹れましょう。こちらでお待ちください」
「アルフレッドが?」

 つぶらな瞳が驚きに見開かれた。
 リリーの手を取り、部屋の中ほどにある応接セットのソファーへと招いた。

「リリーのために長年、お茶を淹れてきたことをお忘れですか?」
「ふふっ、忘れるわけないじゃない。久しぶりで、驚いただけよ」
「ここで私がお茶を淹れては、メイドの仕事を奪ってしまいますからね」

 今でも毎日、リリーのお茶を用意したいと思っているのだが、そこは気恥ずかしさもある言葉を噤んだ。
 無邪気に「楽しみだわ」といって微笑む姿を愛おしく思いながら、執務室横にある配膳室(スティル・ルーム)へ通じるドアを潜った。
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