恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「さあさあ、お喋りばかりしていないで、用意を急ぎましょう」

 年長のメイドが手を叩くと、他の三人はてきぱきと動き始めた。
 私はといえば、恥ずかしさに消えそうな気持ちを震わせ、されるがままで立ち尽くしていた。

 身を任せればっていうけど、昨夜だってそうしようと思ったのよ。
 ああ、寝ちゃうなんて……今夜こそはって考えると、昨日のことが脳裏に蘇って、どうにかなりそうだった。

 どうして私の周りにいるメイドは年上ばかりなのかしら。同じくらいの年頃の子がいたなら、きっと、この恥ずかしい気持ちをわかってくれると思うのに。

 そういえば、今日はカーラがまだ姿を見せないけど、どうしたのかしら。

「カーラの姿がないけど、体調でも悪いの?」

 髪を結われながら、なんの気なしに尋ねてみると、メイドがブラシを動かす手を止めた。

「カーラさんでしたら、ヴァネッサ様に呼ばれていました」
「今日は刺繍をするから、その用意を手伝って欲しいと」
「そう。よかった。体調を崩したわけじゃないのね」

 ほっと胸をなでおろすと、鏡の中を覗き込んだメイドたちが笑顔になった。
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