恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 思わず口走ってしまったことを後悔した。
 メイドたちからしたら、仕えている主夫妻が仲睦まじいことは恥ずかしいことでもないし、むしろ喜ばしいことだ。なのに、突然違うと否定されたら……困惑するわよね。

「リリーステラ様に触れられたのは、旦那様でございますよね?」
「……そうだけど、これは違うの」
「でしたら、どういう意味でございますか」

 年長のメイドからしたら、もしも、私に屋敷の男が手でも出したら大問題って思っているのだろう。なにせ、そういった話がないわけじゃない。男遊びが好きな令嬢がいるなんて話も聞いたことがあるし──ふとダイアナの顔を思い出したけど、すぐさまそれを消そうと頭を振った。

「その……触れてキスをされただけで……」

 恥ずかしさにごにょごにょと口籠ると、メイドたちは顔を見合ってほっと息をついた。

「リリーステラ様、こういうことは勢いですわ!」
「そうでございますよ。旦那様に身を任せられればいいのです」
「痛いのは最初だけですわ」

 そうそうと頷き合うメイドたちの言葉に、ますます耳が熱くなった。
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