恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「私……恋をしたことがないんです」
「今までお勉強ばかりだったものね。これからリリーも、たくさん恋をしたらいいわ!」

 お姉様の提案にびっくりして、涙がポロリとこぼれ落ちた。
 だけど、お姉様の言葉に驚きすぎて、落ちた涙はその一粒だけ。あとは全部引っ込んでしまった。

 恋ってたくさんしていいの?

 スカーレットお姉様は朗らかに微笑み、私の手を優しく撫でた。

「恋は話しを聞くよりも、体験した方がいいわ」 
「たくさん? 恋をする相手は、一人ではないのですか?」
「一人だなんて、もったいない。結婚相手は一人でも、恋の相手は、物語に出てくるヒーローでも良いのよ」
「物語のヒーロー?」

 尋ねる私に向けたお姉様の表情は、いたずらを思い付いた子どものようだった。
 無邪気に微笑むお姉様を食い入るように見つめた。
 
「そうよ。恋物語に出てくるヒーローに恋をしても、誰も怒らないわ」
「……冒険譚のヒーローでも良いのでしょうか?」
「リリーは冒険譚が好きなのね!」

 顔を輝かせて訊かれ、とたんに恥ずかしくなって俯いた。
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