恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「今回は、私の側にいるよりも、屋敷の方が安全ですよ」
「そういうことじゃないわ。どうして、わかってくれないの!? それに、私は癒し手よ。皆の助けになれるわ。だから、連れていって!!」
「リリー……」
必死に頼み、アルフレッド袖を掴んで顔を見上げた。
エメラルドの双眸が戸惑いにゆらめいている。だけど、彼の気持ちも固いようで、その瞳が閉ざされた。
「今回ばかりは──」
「連れておゆきなさい、アルフレッド」
アルフレッドの言葉を遮ったのはヴァネッサ様だった。静かに立ちあがり、私たちの前で微笑まれた。
「しかし、お祖母様」
「私とてリリーには屋敷に残って欲しいと思っていますよ。でも……ただ待つのが辛いこともよく知っています。貴方たちの帰りを待つのは、私だけで充分です」
私とアルフレッドの手を取り、握らせるように手を重ねる。
「それとも、リリーを守りながら戦えないとでもいうのですか?」
「そのようなことは断じてありません!」
躊躇することなくアルフレッドは返答すると、私の手を握りしめた。
「よろしい。リリー、アルフレッドを頼みましたよ」
「おばあ様……お任せください!」
アルフレッドの手を握り返して頷くと、ヴァネッサ様は朗らかに微笑まれた。
こうして私とアルフレッドは、アデルノアへ向けて屋敷を出発した。