恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「問題ありません。屋敷には、緊急時に使うための起動用魔力が保管されています」

 地下へと続くドアを開けたアルフレッドは、足元に気をつけてといいながら、私の手を放した。
 前を進む背中を見ながら、胸元で手を握りしめた。

「地下に降りるのは、初めてだわ」
「ここは緊急時に必要な物資の保管庫と、館で使う魔力の貯蔵タンク、それと転移魔法の部屋……有事の際に必要なものがそろっています」

 階段を降りきると、暗い廊下に出た。廊下にそってドアがいくつもあるようだ。だけど、暗がりで廊下がどこまで続いているのかはわからなかった。
 延々と続いているようにも見える暗い廊下は、まるで深淵へと向かっていくようにも見えた。

 小さな不安が胸をよぎり、無意識のうちにアルフレッドの袖へ手を伸ばしていた。

「足元が暗いので、お気をつけて」

 再び手を握ってくれたアルフレッドは奥へ進み、途中で廊下を折れると、静かな扉の前で立ち止まった。
 ドアノブに手を翳しながら「ここを開けられるのは、私とお祖母様だけです」といった。

「開錠の魔法は、後継ぎにしか伝えられません」

 それだけ重要な部屋なのね。
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