恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 振り返ると、長老が静かに立ちあがった。

「塔への近道をお教えしましょう。ただし、領主様と奥様だけにございます」

 いいながらドアへ向かって歩いていく。これは、ついてこいということだろう。

「……わかった。レスター、すまないが先遣隊と森を抜けて塔に向かってくれ」
「信用するのか?」
「彼らが私たちを陥れる理由はない。大方、塔に続く地下道か魔法陣だろう。大人数で押し寄せれば崩れる可能性もある」

 アルフレッドの推測を聞いた長老は、少し肩を揺らして笑うと頭を深く下げた。
 レスターさんは小さく「まったくうちの主は」とこぼすと、廊下を出た。そうして、そこで控えていた若い騎士に「森へ向かう。皆を集めろ」と指示をだした。

 若い騎士たちが動き出すと、レスターさんは私たちを振り返った。

「リリーステラ様、無理をなさらないで下さいね。うちの旦那様は、貴女のためなら命も投げ出すようなお人だ」
「わかっているわ。だから、一緒に行くの。私がアルフレッドの命を繋ぎます」

 毅然と告げれば、驚いたれレスターさんは口元をほころばせ、胸の前に手を当てた。

「我が主を、よろしくお願いいたします。クラレンス辺境伯夫人」

 その言葉に胸が熱くなる。笑顔で頷くと、レスターさんは颯爽とその場を去った。
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