恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「少し早いけど、お祝いには欠かせないでしょ」
「そうですが、なんのお祝いでしょうか?」
 
 アルフレッドは、私たちが閨をともにしたことをヴァネッサ様たちに感づかれたと、まだ気付いていないみたい。

 ヴァネッサ様は微笑んで「後でゆっくり話しましょう」といい、歩き出した。
 全く理解していないアルフレッドの耳元で「昨夜のこと気付かれたみたい」と囁けば、ほんの少し耳が赤くなって「そういうことか」と苦笑交じりの声が零れ落ちた。

 アルフレッドの腕に抱えられたまま屋敷を進み、聞こえてくるメイドたちの楽しそうな声に、自然と口元が緩んだ。
 いつか、ここに私たちの子どもの声がまざるのね。

 お腹の奥がきゅんっと、甘く疼いた気がした。

「どうしました、リリー?」
「ふふっ……クラレンスのお屋敷は、本当に暖かいわね」

 アルフレッドの頬に顔を近づける。そうですねと頷いた彼の唇に、触れるだけのキスをすると、エメラルドの瞳が見開かれた。

 足を止めたアルフレッドは、目を細めて嬉しそうに笑う。そうして、私に覆いかぶさり口づけをした。
 それは屋敷の廊下でするような軽いキスじゃなくて、思わず背中を何度も叩いてしまった。

 クラレンス辺境伯家での生活はこれからも続く。
 不安がないといったらうそになる。でも、大好きなアルフレッドがいて、優しいおばあ様やメイドたちがいる。

 少しずつ、私たちらしく変わっていけばいいよね。

「アルフレッド、次はその喋り方を直しましょう!」
「……善処いたします」

 苦笑するアルフレッドと一緒に、窓から差し込む陽射しを浴びながら、私たちは大階段を上っていった。
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