恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「──え?」

 これってもしかしたら、ヴァネッサ様は気付いているのかもしれない。私が昨晩──というか今朝まで、アルフレッドに放してもらえなくて、足腰立たない状態だって。

 にこにこ微笑むヴァネッサ様は、メイドたちに「湯浴みの用意をしなさい」と命じた。

「ラベンダーがまだ残っていたわね。たっぷり浮かべてあげなさい。それと今夜は七面鳥を焼きましょうかね」

 ヴァネッサ様が両手を合わせて嬉しそうにいうと、メイドたちが私を振り返った。その目がキラキラと輝いている。そうして「おめでとうございます!」と口をそろえると、バタバタと足音を立てて走り出した。

「足音を立てるんじゃありませんよ」

 ヴァネッサ様の声に、離れたところから「申し訳ございません」って声が返ってきた後、なんだか嬉しそうな黄色い声も聞こえてきた。

 ああ、言葉にしていないのに伝わってしまった。
 お風呂に入ったらバレちゃうんだろうけど、でも、やっぱり知られるのは恥ずかしいわけで。

「お祖母様、収穫祭はまだ先ですが?」
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