恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 そうだわ。
 今夜は温かい野菜スープを食べたいと、料理長にお願いをしましょう。それとも、眠る前に温かなハーブティーを飲むのがいいかしら。この冷えた気持ちを温めてくれるものは、何かしら。
 
 話を聞く気がなくなった私は、彼らがいなくなった時間へと思いを馳せた。

 だけど、話はまだ決着していないわけで。
 笑みを消したお父様が「オーランド卿」と静かに呼べば、いちゃいちゃしている二人の横で、伯爵様は脂汗を滴しながら「はい」とだけ応えた。
 その姿は蛇に睨まれたカエルのようだ。お可哀想に。

「これは、ご子息フェリクス・オーランドの一方的な婚約破棄で、相違はないな?」
「はい。リリーステラ様のお心を傷つけたことをお詫びいたします。何卒、寛大なお許しを賜りたく存じます」
「それでは、ご子息に貴族籍を抜けてもらおう。その上、相応の慰謝料を納めてもらうで、問題はないな」
「……分かりました」

 一瞬息を飲んだ伯爵様は、深く頭を下げて承諾した。

 つまり、お父様はオーランド家と今後も付き合いを続けたいが、フェリクス様の顔は二度と見たくないということでしょう。
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