恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 少し冷えていた指先がじんわりと温かくなる。
 優しい香りのハーブティーを喉に流し込めば胸の内がほっこりと和らいでいった。

 これから私はどうなるのかしら。
 お父様やお義兄様が、フェリクスよりも上等の婚約者を見つけ出してみせるって、息巻いていらっしゃったけど。

 カップを受け皿に戻して、晩餐の様子をぼんやり思い出していると、アルフレッドが「羨ましいのですか?」と尋ねた。

 横に佇む彼は、切れ長の瞳を少し見開いている。
 そんなに驚かせることを言ったかしら?

「だって、冒険が待っているんでしょ?」

 指で本のタイトルをなぞり、別世界へと再び思いを馳せた。

 私では敵を攻撃するような魔法は使えない。傷ついた人を癒したり、結界の力を強めたりはできるけど、冒険に飛び出せるほど強くはない。

 だから、冒険譚が羨ましい。
< 58 / 194 >

この作品をシェア

pagetop