恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 真剣な眼差しに、穏やかになろうとしていた鼓動が飛び跳ねた。

 アルフレッドの睫毛ってとても長いのね。
 さっきも思ったけど、瞳は宝石にも負けない綺麗な緑色をしているし、顔立ちだってとても美しくて、絵本の中から飛び出してきた王子様みたい。

 でも、私の手を取る指は男の人のもので、肩だって私よりもずっと大きくて、がっしりとしているわ。
 アルフレッドが王子様のような正装を身につけたら、どうなるのかしら。マントをなびかせて、腰に剣を携え──

「私の妻に、なってください」
 
 まるで物語に出てくるヒーローのようだった。

 夢想した姿がアルフレッドに重なった瞬間、私は爪先から頭のてっ辺まで熱くなった。きっと、顔は薔薇の蕾にも負けないくらい赤く染まっていたと思うの。

 消えそうな声で、はいと答えるのが精いっぱいだった。

 手の甲に触れたアルフレッドの柔らかい唇を感じたとき、小さな胸を揺らすくらい、鼓動が跳ねた。

 こうして私は学園を卒業すると同時に、アルフレッドと共にクラレンス辺境伯領へ向かうことになった。
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