恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「なにを仰られるのですか」

 アルフレッドの大きな手が、私の指をそっと握る。

 その手はもう、白い手袋で覆われていない。
 ロスリーヴ侯爵家のお屋敷で私に「私の妻に、なってください」と告げた日から、白い手袋は取り払われた。

「私にとってリリーは、誰よりも輝かしく尊い方です」

 優しく手の甲を撫でられる。

「尊いだなんて……」

 褒められすぎると、逆に不安になるものね。
 アルフレッドが見ている私は、本当に私なのか……

「尊いですよ」

 大きな手に引き寄せられる。その逞しい両腕で、優しく包み込むように抱き締められた。

 ふわりと香るのは、カモミールの香油だろう。ほんのりとリンゴのような甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「少しお転婆がすぎるのことは、存じ上げませんでしたが」

 それは、遺跡で塔から放り出されてしまったことをいっているのだろうか。

「ふふっ、凄く楽しかったわ。アルフレッドと一緒なら、これから先も飽きずにすみそうね」
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