恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 膝を開いて、あんな格好をするなんてはしたない姿をアルフレッドに見せないといけないなんて。
 耳が熱くなって、目の奥が熱をもち始めた。どうしようもない恥ずかしさで俯くと、ヴァネッサ夫人が穏やかな声で話に入ってきた。

「皆さん、あまりリリーステラを苛めるのではありませんよ」
「ヴァネッサ様、そんなつもりでは」
「ええ。皆さんも、私と同じくアルフレッドとリリーステラの子を楽しみにしているのでしょう。でも、そう急がせてはなりませんよ」

 手に持っていたラベンダースティックをテーブルに置いたヴァネッサ夫人は、私の座るカウチの横に移動してくると腰を下ろした。
 シワを刻んだ白い手が、そっと私の髪を撫でた。それに釣られて顔を上げると、優しい微笑みが向けられていると気付いた。

「こんなに赤くなってしまって」
「あ、あの、それは……」
「アルフレッドを本当に好いているのだから、自然と、子を授かりますよ」
「ヴァネッサ夫人……」

 優しく髪を撫でてくださる夫人の手に、ふと、アルフレッドの面影が重なった。

「でも、私が生きている間に、赤子を抱かせてくださいね」

 私は優しい言葉に少しのプレッシャーを感じながら、小さく「はい」と頷くのが精いっぱいだった。
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