恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「不幸?」

 顔を巡らせると、口を滑らせたメイドが、こらっと小さく窘められていた。

「あの、不幸ってどういうこと?」
「それはその……」

 さっきまでの黄色い声と浮き足立った様子はどこへやら。メイドたちは急に口を固くした。そうして、一番年長のメイドへと視線を向ける。

「……口止めをされているわけでもありませんが、あまり、気分のよい話しではありません」
「でも、クラレンス辺境伯家に関わることなんでしょ?」
「そうでございますが……」
「お願い、教えて」

 頼み込むと、メイドは深い息を一つついてから話し始めた。

「ヴァネッサ様は五人のご令嬢がいました。アルフレッド様のお母君はご長女に当たりますが……次こそは男子をと望まれても、なかなか子宝に恵まれなかったのです」

 クラレンス辺境伯家は未踏遺跡(ダンジョン)の管理だけではなく、防衛の要でもある北の領地を預かっている。そのため、後継ぎがいないのは大いに問題だった。
 子宝に恵まれたと思っても、生まれるのは娘ばかり。当時、呪われているのではと実しやかに噂されたほどだったそうだ。
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