妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「ジュスティーナ嬢、ぼんやりしてどうかしたのか?」

「ラウロ様」

 遠い目でルドヴィク様のことを考えていると、ラウロ様に不思議そうに尋ねられた。

 今はお屋敷の温室に来て、植物に光魔法をかけているところだったのだ。

「すみません、ちょっとルドヴィク様のことを考えておりまして」

「ルドヴィク殿のこと……」

 口にした途端、ラウロ様の顔が不安げになる。

 ちょっと言い方を間違えたかもしれないと慌てて説明した。


「あ、いえ、ルドヴィク様がしつこく戻ってこいと言ってくるのにうんざりしていただけですの!」

「そうか……。ルドヴィク殿はまだ君のことを諦めていないんだな」

 ルドヴィク様を懐かしく思い出していたわけではないと説明したつもりが、ラウロ様は余計に難しい顔になってしまった。

「あの、ラウロ様。私、ルドヴィク様のことは何とも……」

「ジュスティーナ嬢」

 ルドヴィク様のことは何とも思っていないのだと伝えようとした途端、手をぎゅっと掴まれた。ラウロ様は真剣な目でこちらを見ながら口を開く。


「ジュスティーナ嬢、俺と結婚して欲しい」

「へっ!?」

 思わず間抜けな声で叫んでしまった。私は戸惑いつつも尋ねる。

「ど、どうなさったのですか、急に」

「いや、君のご両親にはジュスティーナ嬢に伴侶になって欲しいと伝えたのに、肝心の君自身にははっきり伝えていなかったと思って……。ジュスティーナ嬢、改めて言わせてくれ。君が好きだ。どうか俺と結婚して欲しい」

「え、あ、あ……」

 突然の言葉に、なかなか言葉が出てこない。

 国王様と王妃様に会いに王宮へ行って以来、すっかり婚約することが前提のように話が進んでいたけれど、直接こんな風に言われたのは初めてだ。

 私はどぎまぎしながら答えた。


「その……喜んで」

 私が答えると、ラウロ様の顔がぱっと輝く。

「ありがとう、ジュスティーナ嬢……! 伝えるのが遅くなってすまなかった……!」

「ふふ、むしろ以前私の方がプロポーズみたいなことを言ってしまいましたしね。ラウロ様も受け入れてくださっているようなので、私、すでに結婚していただくつもりになっていましたの」

 冗談めかしてそう言ったら、ラウロ様はまた難しい顔になった。

「そうだな。なんだかいつも君に先に言わせてしまっている気がする。意気地がなくて申し訳ない」

「そんな風に言わないでくださいませ。私はラウロ様の、私が突拍子もないことをしても笑って受け入れてくれる心が広いところ、とても好きですわ」

「ジュスティーナ嬢……!」

 思ったままにそう言うと、ラウロ様は感動した顔でこちらを見る。

 ラウロ様が私の言葉に喜んでくれることが、なんだかとても嬉しかった。


「私、ラウロ様に会えてよかったですわ」

 そう言ったら、ラウロ様の頬が途端に緩んだ。

「俺も君に会えてよかったと心から思ってるよ」

 ラウロ様は優しい声でそう答えてくれた。

 幸せな気持ちが胸に広がっていく。こんなにいいことばかり起こっていいのかと不安になるくらい。

 けれど、もう私なんかがとは思わなかった。

 自分を好きになれなかった気持ちは、ラウロ様と過ごす日々の中で、いつの間にかどこかへ消え去ってしまったから。


終わり
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