妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「それはありがとうございます……」

「君のような可憐な人がいるとは知らなかったな。よければ一曲私と踊ってくれないだろうか」

「え……」

 コルラード様は首を傾げ、楽しそうな笑みを浮かべて言う。私は呆気に取られてしまった。

 殿下と踊りたいご令嬢なんてたくさんいるはずなのに、なぜぼんやり遠くから見ていただけの私なのだろう。

 正直に言ってコルラード様と踊ったりなんかしたらご令嬢たちの敵意が怖いし、そもそも今日はラウロ様といたいので、断りたかった。

 しかし、第二王子からの誘いをそんな理由で断るなんて出来ない。

 言葉に詰まる私を見て、困惑しているのに気づいてくれたのか、ラウロ様が横から控えめに割って入ってくる。


「……コルラード殿下。ジュスティーナ嬢は今あまり気分が良くないように見えるので、ほかのご令嬢を誘われては……」

「ああ、申し訳ない。パートナーと一緒だったんだね! 全然気づかなかったよ。君、少しだけこちらのご令嬢との時間をお借りできないだろうか?」

 コルラード様は目を大きく開けてラウロ様を見ると、にこやかに言った。

 口調こそ感じがいいけれど、すぐ隣にいたラウロ様に気づかないなんてことがあるだろうかと疑問が胸に広がる。

 しかし、戸惑っているうちに殿下は私の手を取り、無理矢理ホールの真ん中に引っ張って行ってしまった。周りのご令嬢たちから悲鳴のような声が上がる。

 足を進めるうちに二曲目の音楽が流れだし、ダンスが始まって逃げようにも逃げられなくなってしまった。


「あの、コルラード殿下……!」

「君、名前は? どこの家のご令嬢だい?」

 慌てる私に構わず、コルラード殿下はにこやかに尋ねてくる。悪びれもしない無邪気な顔。慌てているこちらの方がおかしいと思ってしまうような。

 私は仕方なく答えた。

「……ジュスティーナと申します。ローレ子爵家の娘です」

「ああ、ローレ家の。確か光魔法を持つ者を多く輩出する家柄だったね」

 軽やかにステップを踏みながら、コルラード殿下は言う。私はまさか殿下が小さな領地しか持たず有名でもないローレ家のことを把握しているとは思わず、驚いてしまった。

「はい、よくご存知でしたね」

「光魔法を使える人間は貴重だからね。当然知っているよ。君も光魔法を使えるのかい?」

 殿下は興味深そうに尋ねてくる。
< 39 / 108 >

この作品をシェア

pagetop