妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「ジュスティーナ嬢。君のことがどうしても気になって、失礼だけれど色々調べさせてもらったんだ。ご家族と衝突して家に帰れないらしいね」

「ええと、はい……」

「それならば王宮に来ないか? 王宮に来ればこんな幽霊屋敷よりずっといい暮らしをさせてあげられるよ」

「え?」

 突然の言葉に呆気に取られてしまった。今、王宮に来ないかと言っただろうか。

「いえ……。王宮にうかがうなんて出来ませんわ。そんなことをしていただく理由がありませんし……」

「そんな固いこと言わないでよ。私は君にとても興味があるんだ。ねぇ、ジュスティーナ嬢」

 コルラード様はそう言ってこちらに近づいてきて、躊躇いなく私の肩を抱く。

 突然距離を詰められて戸惑った。しかし王子殿下の腕を振り払うわけにもいかず、ただ困惑することしか出来ない。


「……コルラード様。親しくもない女性に気安く触れるのはどうかと思いますよ」

 ラウロ様は低い声で言うと、さっとコルラード様と私を引き離す。

「なんだよ、ラウロ。お前には関係ないだろ?」

「……ここは俺の家なのですが」

 不愉快そうに言うコルラード殿下に、ラウロ様は眉間に皺を寄せて反論する。それから固い声で続けた。

「……それに、ジュスティーナ嬢にはうちの屋敷にいて欲しいので。ジュスティーナ嬢には不自由をさせないようにしますから、コルラード様はお気遣いいただかなくて結構です」

 思わずぱっとラウロ様の顔を見てしまった。

 ラウロ様はいたって真剣な顔で殿下を見ている。きっと突然のコルラード殿下の申し出に戸惑う私のために気を利かせて言ってくれたのだろう。そう思ったけれど、なんだかそわそわしてしまう。


「ふーん。それはまぁそうだろうな。植物と相性のいい光魔法が使えるなんて、ロジータ妃の鏡みたいな存在じゃないか。そんな利用価値のあるご令嬢、目の届くところに置いておきたいよなぁ」

「……コルラード様、俺はそんな理由で言っているわけでは」

「違うのか? それならジュスティーナ嬢を私が引き取ったっていいはずだろう」

 ラウロ様と殿下は、私にはわからないことで言い争っている。

 ロジータ妃とは、亡くなった国王陛下の第三妃様ではなかっただろうか。私がその人の鏡? コルラード殿下の言っていることがわからず、頭が混乱してくる。

 するとコルラード殿下は従えていた兵士たちの方を向いて、冷たい声で命じた。


「お前たち。ジュスティーナ嬢を王宮まで運んでやれ。このままラウロの元にいて協力でもされたら困る」

「えっ?」

 殿下の言葉を理解する前に、兵士たちが一斉にこちらへやって来て私の腕を拘束した。ぎりぎりと強く腕を掴まれ、痛みに顔が歪む。
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