母の世界のTKG
 彼女の知らない味だった。
 なのに、おいしくて、懐かしかった。
 どうしてか前がぼやけて見えない。

「泣くほどかよ」

「私にも、よくわかんないんです。でも……すごく、おいしいです」

「おかずも食べてね、オリビアちゃん」

「ありがとうございます……!」

 慣れない箸でオリビアは必死に食べた。
 ほとんどが知らない料理なのに、時折ふと母の面影を感じた。
 母がときどき作ってくれた甘辛い料理や、酸味と塩気の強いサラダ、温かい汁に箸が止まらない。

「……ごちそうさまでした!」

 いつの間にかオリビアは完食していた。
 母に教わったとおり、手を合わせて感謝を捧げる。
 目の前の夫婦は優しい顔でオリビアを見つめ、それが今は亡き両親のようで、また涙があふれてきた。

「オリビアちゃん、今日は泊まっていきなさいな」

「そうだな。行くところもないだろう。翔も泊まるだろう?」

「うん、もう帰れねえし」

「何から何まで……ありがとうございます」

 オリビアは頭を下げる。
 涙がぽろぽろと落ちて、足に跡をつけた。


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