座敷牢令嬢は今日も謎を解く
「手紙をよこしなさい」
「もちろん。そんなに心配しなくて大丈夫だから」
早くも母親の目には涙が滲んでいる。

キヨが今日嫁ぐ家は生家から20キロ離れた場所にある。
途中まで見送ってもらって、その後は迎えが来ている手筈になっていた。
そろそろと玄関先から歩き出したとき、軍服姿の男たちがズラリと列をなしていた。

みんな父親の仕事関係者で、キヨの門出を祝いに来てくれたのだ。
ピシッと伸ばされた背筋にまっすぐに向けた顔。
一見ものものしそうにみえるけれど、今日は祝うべき日ということでみんなの顔には笑みが浮かんでいた。
その笑みにホッと安堵の笑顔をみせてキヨは再び歩き出す。
< 3 / 206 >

この作品をシェア

pagetop