絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
 どこまでも強欲な自分に辟易するも、そんな自分をセレナはどうしても切り捨てることができなかった。
 兄のカイルとして生きてきた中で多くのことを諦めてきたセレナが、初めてセレナとして(・・・・・・)手放したくないと思った気持ちだった。

 動揺を隠すように胸元に光る水晶を手に取ると、曇り一つない透き通った輝きに目を奪われる。がんじがらめになり入り乱れる心が、浄化されるような、そんな清い輝きが今の自分にはとても眩しくて優しかった。

「すごく綺麗ですね」

 子どもの頃――カイルが亡くなる前は、ごくごく普通の女の子だったセレナ。リボンや宝石などかわいいものが大好きで、街に出たときには母にあれが欲しいこれが欲しいとねだっていた。
 ピンクや黄色、オレンジに赤。
 身に着けるものは、どれも女の子らしい可愛い色合いのものばかり。
 それも、カイルとして生きることを強いられてからは、当然そんな色のものなど選べるはずもなく、与えられるものも全てが男ものになり、セレナが持っていた宝石や装飾品などはすべて処分されてしまった。

 だから、この年になってまさかこんな宝石をもらえる日が来るなんて、夢を見ているようだった。

「ありがとうございます、大切にします」

 緩む頬をどうにか引き締めて、セレナは礼を伝える。
 アンリもまた、満足そうに頷いて見せた。

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