君だけが、僕の世界
第15話 知らない幸せ

『第15話 知らない幸せ』


◯マンション・部屋の前、夕方

彩月:「諦めようって何度も言い聞かせてきたけど…。まだ、好きでいてもいいよね?」
・腕を引き寄せて抱きしめる彩月。月々は驚きで固まる。
月々:「…っ!」
・月々が彩月の胸を押し返す。彩月は一瞬目を伏せ、そして哀しそうに微笑む。

月々:「…あのね、私もゆづにさっちゃんに彼女ができたって嘘つかれてたの」
・真剣な目で彩月を見つめる月々。彩月は目を見開いて驚く。
彩月:「え…」
月々:「…ゆづが嘘をついていなければ、今頃隣にいるのはさっちゃんだったかもしれない」
・泣きそうになる気持ちを堪えながら、グッと拳を握る月々。瞳は潤んでいる。

月々:「でも、結局私はさっちゃんと付き合えてたとしても…ゆづと浮気すると思う…!」
彩月の目を見て、はっきりと声を出す。彩月は驚きで目を見開く。
月々(心の声):(だって、ゆづが好きだ。どうしようもなく。嘘をつかれてたとしても、騙されてたとしても)
・胸に手を当て、苦しそうに俯く月々。
月々:「さっちゃんのこと好きだったけど、ゆづとは全然違う。多分、憧れの方が大きいんだと思う」
・真剣な瞳で彩月を見つめる。彩月は唇を噛みしめる。
月々:「さっちゃんは、一緒にいて心地いいし、頼りになるし…。でもゆづといると、胸がぎゅって苦しくなる」
・涙をこらえながら、拳を握る月々。
月々(心の声):(ゆづといると、心が苦しい。痛い)
・胸の奥を押さえ、切なさと愛しさが入り混じる表情。

月々:「私が例え、子どもの頃のことを覚えていなくても…ゆづに会いたかった、大好きだったって…体が覚えてる」
・涙をこらえながら、真剣な瞳で彩月を見つめる。
・彩月はフッと笑って、月々の頭を優しく撫でる。
彩月:「…大きくなったなー」
月々:「え…」
彩月:「何かあったらいつでも頼って。俺は、2人のお兄ちゃんだからね。同い年だけど~」
・ニッと笑う彩月。月々の瞳に涙が滲む。胸がじんわり温かくなる演出。
彩月:「覚えてる?シロツメクサの冠をあげた日。どうして、外に連れ出したか」

◯思い出の回想
彩月:「結月の手術があって、“ゆづに会いたい”って泣き叫ぶ月々ちゃんを連れだしたんだよ」
・懐かしそうに微笑む彩月。月々は目を丸くする。

彩月:「あの頃から、ずっと結月ばっかだったなー。結月ばかりで、俺とは遊んでくれなかったし」
・呆れ顔の彩月。
彩月:「それにしても、あいつ俺たちを騙すくらいだから、もっと酷いことしてるかもな。もの凄い重い男だけど、月々ちゃん大丈夫?」
・月々を心配そうに見つめる彩月。
・月々は笑って返す。
月々:「もう、ゆづから離れないって決めたから。ありがとう、さっちゃん」
・彩月はため息をついて、月々の頭から手を降ろす。
彩月:「最初から、俺が出る幕はなかったってことだな。じゃあ、結月のことよろしくね!」
・彩月は扉を開けて部屋に入っていく。月々はその背中をじっと見送る。
月々(心の声):(…ゆづ。私たち、話さないといけないこといっぱいあるよ)



※場面転換



◯教室・昼休み

・冬休み明け。桜と日菜子と3人で机を囲み、お菓子を食べている。
月々:「あの、2人にご報告があるんですけれど…」
・恥ずかしそうに切り出す月々。桜と日菜子が顔を近づける。
・3人が机に身を寄せて、小声でごにょごにょと話す描写。月々が赤面している。
桜:「つっ、付き合っ…!」
・驚いてガタッと立ち上がる桜。周囲の生徒が一瞬振り返る。
・日菜子が慌てて桜の口を手で押さえる。
日菜子:「声、大きいってば!」
・月々は恥ずかしそうに笑う。

月々:「それで…2人に謝らないといけなくて」
・桜と日菜子は目を丸くする。桜は立ったまま、日菜子は足を組んで座っている。
桜・日菜子:「何を?」
月々:「ずっと、約束の男の子を探してたから…さっちゃんと再会してさっちゃんのことを好きになって…それなのに、気付いたらゆづのことばかりで…相談する前にこんなことになっちゃって、ごめんね」
・月々は恐る恐る話し始める。心の声が重なる。
月々(心の声):(何言われるかな、怖いな…)

・月々がチラッと2人の顔を見ると、2人は大きなため息をついた。
桜:「あのね、最初から分かってたよ」
月々:「え?」
日菜子:「きっと最後には、弟の方を選ぶだろうなって桜と話してたの」
月々:「ええ!?」
・どや顔の桜と、真顔でチュッパチャップスを舐め始めた日菜子。
桜:「見てれば分かるよ~親友なんだもんっ」
・ぎゅっと月々に抱きつく桜。月々は照れて顔を赤くする。
桜:「どっちにしろ、運命だよ!」
月々:「う、運命…そっかぁ~」
・桜が月々をぎゅっとハグ。月々は照れて笑う。

・日菜子は少し真剣な顔で、チュッパチャップスを口から外す。
日菜子:「…まぁ、でも。全てが運命とは限らないかも」
月々・桜:「え?」
日菜子:「どこか胡散臭いっていうか…私、見ちゃったんだよね。遠足のあと」
・思い出すように話し始める日菜子。桜と月々は固まる。
日菜子:「たまたま弟と山下が2人で話してるところ見かけて。その時の山下の顔が真っ青だった。今にも死ぬのか?ってくらい」
桜:「えぇ?結月くんが何か言ったってこと?」
・驚いて身を乗り出す桜。月々はクラッと頭を抱える。
月々(心の声):(あ、あいつ…)
・結月の陽気な笑顔を思い出す。だがその顔に怒りマークを浮かべる月々。
日菜子:「月々も、山下からの好意は気付いてたでしょ?」
月々:「ま、まぁ…」
・月々が遠い目をする。
月々(心の声):(前の席だし、遠足も同じ班だったしなぁ…)
桜:「でも、それくらい愛が重いってことでいいじゃんっ!」
月々:「よくないよっ!友だちいなくなるよっ!」
・桜と月々がキャッキャと楽しそうに笑い合う。

・日菜子はチュッパチャップスを舐めながら、無言で2人を見つめる。
日菜子(心の声):(…私と桜も、いつも睨まれてるんだけどなぁ)
・結月が月々といるとき、いつも鋭い視線を向けてくる場面が脳裏に浮かぶ。
日菜子(心の声):(まぁ、軽い男よりは少しくらい愛が重い男の方がいいか)
・チュッパチャップスを口に戻し、フッと笑って2人を見守る。

◯教室・放課後

結月:「るー。帰ろ」
・机に突っ伏しながら、隣の席の月々の髪をクルクルといじる。
月々(心の声):(こいつ…)
・月々がジト目で結月を見る。
月々(心の声):(ほんと、早く席替えしないと危険ッッ!!)
・月々は心の中で泣いている。
・授業中もずっとちょっかいをかけてきたり、休み時間も距離が近い結月を思い出す月々。
・月々が「ふぅ」と一呼吸を置いて、結月の方を見る。結月ははてなマークを浮かべている。
月々:「…ちょっと話があるの」
・真剣な顔の月々を見て、結月がクスっと笑う。
結月:「いいよ。今日は、俺の部屋で話そうか」



※場面転換



◯結月の部屋

・無機質で物が少ない結月の部屋。月々は床に正座し、膝の上で手をぎゅっと握って緊張している。
・結月はブレザーを脱ぎ、月々の後ろにあるソファにドサッと座る。
結月:「それで、話って?」
・月々は緊張して結月の方を振り向けない。
月々(心の声):(な、なんて切り出したらいい?さっちゃんのことも、山下くんのことも…)
・月々がぐるぐる考えていると、結月の方から口を開ける。
結月:「彩月に彼女がいるって嘘ついたことばれた?」
・月々が目を見開いて、バッと振り向く。結月は真顔。
月々:「な、なんで嘘ついたの?」
・しっかり目を見て、恐る恐る聞く月々。結月は月々を見下ろすような形で、少し冷たい目をしている。
結月:「彩月に、るーを渡したくなかった」
・月々は言葉を失い、沈黙する。
月々(心の声):(嘘をつくのはよくないことだけど、結果的に私はゆづの方を好きになったわけだし…)
・難しい顔をして考える月々。結月はじっと見下ろし続ける。

・結月は、月々が彩月のことを考えているのかと勘違いして、イラっとする。冷たい顔で、ガッと乱暴に月々の顎を掴む。
結月:「今、何考えてんの?」
月々:「え…」
・冷たい表情に体が震えだす月々。顎を掴まれたまま、視線を逸らせない。
・月々はぎゅっと拳を握り締め、意を決して結月に言い放つ。
月々:「や、山下くんにも何か言った?」
・さらに冷たくなる結月の表情。月々の震えが止まらない。結月の目は鋭く、支配的な光を放つ。
月々(心の声):(やばい…逃げなきゃっ…)
・月々は本能的に結月の手首を掴んで振り払おうとするが、力が強くて振りほどけない。
月々:「…っ、」
結月:「…るーのことが、好きで仕方ない」
・冷たい表情のまま、しかし瞳には哀しさと愛しさが混ざっている。

・月々は結月を見上げる。結月の目は、少し哀しそうに、愛おしいものを見るような光を宿している。
月々:「…」
・言葉を失い、ただ見つめ返す。
結月:「るーだけがいれば、それでいい。るーしか、いらない。この世界に必要なのは、るーと俺だけで十分でしょ」
・結月はそう言って、月々を抱き上げる。月々は結月の膝の上に乗る形になる。
月々(心の声):(…あぁ、これは依存だ)
・結月の執着するような目に、少し震えあがりながらも、心の奥底でトクントクンと胸が跳ねている。

結月:「るー。俺のこと、嫌いにならないで」
・ぎゅっと月々を抱きしめる結月。強い腕に包まれる月々。
・月々は結月の首に顔を埋め、背中に手を回す。
月々:「嫌いにならないよ。大丈夫。私も、ゆづがいないと生きていけない」
月々(心の声):(これは…今後が大変だなぁ)
・少し困ったような表情を浮かべる月々。
・そう思いながらも、結月のことが愛しくてたまらない月々。結月は満足そうに目を閉じ、月々をさらに強く抱きしめる。
結月:「キス、していい?」
月々:「えっ、んむっ…」
・答えを聞く前に唇を押し付ける結月。月々は驚きながらも受け止める。
結月(心の声):(やっと、やっとだよ。やっと、るーは俺のもの)
・強く抱きしめながら、執着と歓喜が入り混じる表情。

◯結月の回想
・幼い結月と幼い月々が病室で折り紙を折っている記憶。
幼い月々:「…でね、ライオンさんとかトラさんはよるのほうがうごくの!」
幼い結月:「へ~」
・楽しそうに動物園の話をしてくれる月々を見て、寂しい顔をする幼い結月。折り紙を握りしめながら、心の奥にぽっかりとした孤独を抱えている。
幼い結月:「…るーは、おそとのせかいのことたくさんしってるんだね」
・月々はきょとんとした顔で手を止め、結月の顔を見る。
幼い結月:「ぼくは、おそといけないから」
・体に繋がれた管を見て、哀しく笑う幼い結月。
・そんな結月の両手を、幼い月々がぎゅっと握り締める。
幼い月々:「わたしがかわりに、おしえてあげるっ!ゆづのせかいを、わたしのきおくでいっぱいにするの!」
・キラキラした目で結月を見つめる月々。結月は目を見開き、この瞬間に何かが変わった気がする。

幼い月々:「でも、わたしもしらないこといっぱいあるからな~」
・頬杖をついてため息をつく月々。その姿に思わず笑ってしまう結月。
幼い結月:「ははっ」
幼い月々:「さっ、おりがみのつづきしよっ!」
・俯いて折り紙を続ける月々。結月は優しい顔でその姿を見つめる。
幼い結月(心の声):(るーと、いっしょにいたい。るーが、ぼくのせかい)
・幼い結月の瞳に強い光が宿る。月々への依存の芽が生まれる瞬間。

◯現在に戻る

・降り注ぐキスの嵐に、月々は息がうまくできない。
月々(心の声):(くるしいっ…でも、きもちい…)
結月:「他のことは全部忘れて。るーは、俺だけ見てればいいの」
・大きな両手で月々の頬を掴み、身動きができないまま、より一層激しくなるキス。
月々:「んっ…はぁっ…」
・月々は苦しそうにしながらも、結月の腕の中で受け止める。
月々(心の声):(すき…ゆづ…すき…)

結「んっ…はぁっ…るー…」
結月(心の声):(…るー。俺、大変だったんだよ?いろんなとこまで、手回してさ)
・妖しい笑みを浮かべる結月。月々はとろけて何も考えられず、気付いていない。
・実は、遠足のとき月々に好意を持っていた山下に「るーは俺のものだよ。手出したら、どうなるか分かるよね?」と遠足の後日に脅していた。
・ねずみの国で彩月ファンに囲まれて彩月と離れたのも結月の計画。
・それを機にヒートアップしてしまったいじめを結月が「俺が頼んだのはねずみの国だけなんだけど。誰がここまでやれって言った?今後、るーに関わったら殺す」と脅していた。

・月々は結月の膝の上で、甘さに溺れて何も考えられない。結月の妖しい笑みには気付かないまま、ただ「好き」という感情に支配されている。
月「…っ、はぁっ…ゆ、づ…」
・月々のとろける顔を見て、ゾクッとする結月。
結月(心の声):(何も知らなくていい。知ろうとしなくていい。俺だけを信じていて)
月々は半分意識が溶けたように、ただ結月の胸に身を委ねる。結月は妖しい笑みを浮かべながら、強く抱きしめる。
・力が抜けている月々の耳元で、息を整えてボソッと呟く結月。
結月:「…大好きだよ」






fin.
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