君のためにこの詩(うた)を捧げる
数日後。



教室で笑う澪の隣に、湊が自然に座る。



ノートを貸したり、昼食を一緒に食べたり。



周りの女子たちがざわつき始めた。


「ねえ、結城さん。最近、朝倉くんと仲良くない?」



「まさか新しい彼氏?」



その言葉が届いたのは、偶然テレビ局にいた輝の耳にもだった。



スタッフのスマホの画面に、SNSの噂が映る。



《澪、転校生と急接近!? “橘輝の元カノ”に新恋人か》


「……なに、これ」



輝はスマホを奪うように見つめた。



そこに映る澪と湊の笑顔。



笑っているのに、どこかぎこちない。



でも、輝には耐えられなかった。



「撮影止めて。……すみません、外出ます」



スタッフの声を無視して、
輝は外に飛び出した。


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