君のためにこの詩(うた)を捧げる

エピローグ「春の光の中で」

春の終わり。


街路樹の桜が、すっかり葉桜になっていた。


澪は卒業アルバムを抱えながら、
校門の前で立ち止まった。


(……あの日から、もう一年か)


輝は、活動を再開してから音楽番組やドラマに復帰した。


新曲は、彼自身が作詞した『君と生きる光』。



初披露されたその日、ファンのコメント欄には
〈あの子のことを歌ってる〉という声が溢れた。


でも、澪は何も言わなかった。


ただ、彼の隣に立つ約束を守るように、
静かに日常を過ごしていた。
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