君のためにこの詩(うた)を捧げる
数ヶ月後。


輝は夏フェスのステージに立っていた。


客席の最前列
――そこには、キャップをかぶった澪の姿。


彼はマイクを握り、深呼吸をして、
澪を見つめながら歌い始めた。


🎵
光はいつも君のそばに

離れても消えないぬくもり

ひとりじゃない
だって、
君が僕の未来だから


観客の歓声が響く。



その中で、二人だけの目が合った。


澪は小さく微笑んで、
そっと口の形で言った。


――「だいすき」。


輝も、同じ言葉を口の動きで返す。


カメラには映らない、
ふたりだけの秘密の会話。



ステージのライトが彼を包み、
澪の目の中にも、その光が映っていた。


もう、隠れる恋じゃない。


光の中で、ちゃんと“ふたり”で生きていく。

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