離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました

ふたりきりで一緒に暮らすだけでも十分意識していると反論しかけて、狼狽えつつも考えを巡らせる。

律は未依と住むマンションに私室を用意してくれていたが、寝室はひとつだった。それは未依と一緒に寝るのが当然だと考えていたからに他ならない。

けれど、現在彼はひとつしかないキングサイズのベッドを未依に譲り、律自身はリビングのソファで眠っているのだ。

律の優しい気遣いだと理解しているし、このままでいいとも思っていない。

律に『ちゃんと考える』と返事をした以上、今後について逃げずに考えなくてはならないのだ。未依自身も自分の気持ちと向き合うべきだと思っている。

幼い頃からずっと好きだった初恋の人。そんな彼に結婚を申し込まれた時は、喜びと罪悪感がないまぜになって押し寄せてきた。

両親を失った未依のために家族になろうとしてくれた優しい彼を、自分の消化しきれなかった恋心ゆえに縛り付けてしまったと後悔していたし、だからこそ離婚を決意した。

彼を解放してあげたい。その一心で、二年も前から律の帰国と同時に離婚すると決めていたのだ。学生時代のような、諦めたくても諦められない苦しみは、もう感じなかった。

ただ心に穴がぽっかりあいたような虚しさだけがあって、それすらも見て見ぬふりができるくらいに未依は強くなった。

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