離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました
その日は大きなアクシデントもなく、患者の状態も比較的落ち着いていた。急変やナースコール自体も少なく、就業時間内に看護記録の作成も終えられそうだ。
律は未依よりも遅くなるだろうが、きっとシチューが完成する頃には帰ってくるだろう。もし予定より遅くなったとしても、話がしたいから待っているつもりだ。
「今日は平和だったみたいだね」
夜勤を担当する看護師への引き継ぎを済ませると、あかりに話しかけられた。彼女も今日は夜勤らしい。
「はい。あ、そうだ。七◯三号室の林さん、無事にお孫さんが生まれたそうですよ」
「そうなんだ。あとでお祝いを言ってこなくちゃ」
「タイミング見ないと、すごく引き止められますよ。写真とか動画とか、全部見せようとしてきます」
林は六十代の男性で、肝硬変で入院している。大好きなお酒を断たなくてはならず、入院当時はイライラしていて、ベッドを抜け出したり薬を拒否したりと、対応に困ることが多々あった。
けれど、昨夜娘さんが出産して〝おじいちゃん〟になった途端、目尻を下げて隙あらばスマホの写真を見せようとしてくる。