離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました
未依はそんな林の話を時間が許す限り聞き、『おじいちゃんになったんですから、お孫さんのためにも長生きしなくちゃいけませんね』と励ました。
彼もその言葉に触発されたのか、今日は文句を言うことなく薬を飲んでくれたし、看護師への暴言なども一切なかったのだ。
先程は『神崎さんの言う通りだ。長生きして孫娘のウエディングドレスも見てやらねぇとな』と意気込んでいた。
そう話すと、あかりはくすっと肩を竦めて笑った。
「相変わらず神崎さんは患者さんに好かれるね。あの林さんが一度も文句を言わずに薬を飲んだなんて」
「私はなにもしてないですよ。きっとお孫さんが生まれて、林さんの中で考えが変わったんだと思います」
「そうだとしても、聞いてくれる人がいるっていうのも患者さんにとっては大切だったりするでしょ。忙しくてつい聞き流しちゃう患者さんの世間話に、ちゃんと耳を傾けてる。それって誰にでもできることじゃないし、そういう神崎さんを私は尊敬してるよ」
未依は患者の悩みを聞いたり、弱音や愚痴を吐き出せる存在であることをポリシーにしている。
けれどそれは、先輩であるあかりを見て学んだことだ。彼女は患者からの信頼も厚く、採血や吸引などの技術も優れている。未依にとって理想の看護師像だ。
そんな彼女から褒められたことが嬉しくて「ありがとうございます」と頭を下げると、あかりはニッとイタズラっぽい笑みを浮かべた。