Existence *
「…えっ、葵?」


混乱したように呟く美咲は葵ちゃんの腕を離し、真向かいでジッと戸惑ったように見つめる。


「会いたかったよ、美咲。ずっとずっと待ってたんだから」

「えっ?葵…なの?」


未だ混乱している美咲は再び言葉を口にした。


「葵なの?って、何それ」


顔を顰めた葵ちゃんは頬を膨らまし美咲を見つめるも、未だ美咲は困惑した様子だった。

…だよな。

連絡してねぇんだから、葵ちゃんがかわった風貌すら知らねぇよな。

香恋が産まれてからバッサリ肩まで切られた髪。


「だって、長い髪どーしたの?」

「なんかうっとおしくなっちゃって」

「へー…そうなんだ。似合ってる」

「美咲はもっと美人になってるね。大人っぽくなった!」

「さぁ、どうだろ。もういい歳だしね…」


苦笑いする美咲に、葵ちゃんはもう一度、美咲を抱きしめた。


「会いたかった。美咲、会いたかった」

「うん」

「ずっとずっと会いたかった」

「うん、私も」

「帰って来るのずっと待ってた」


潤む葵ちゃんの瞳を見て、俺は2人の再会に頬を緩ませた。


「おかえり。…美咲」


不意に聞こえた声。

2人の背後に視線を向けると、美咲のお母さんが笑みを向けて美咲を出迎える。

その声に美咲は葵ちゃんから身体を離し、お母さんと向き合う。

その美咲の瞳が微かに潤んで、そして揺れた。


「ただいま」

「元気そうで良かった。…翔くんもごめんね、ありがとう」

「あ、いえ…」


申し訳なさそうに向けられたお母さんの視線。

その後ろから覗き込むように顔をだしてきた香恋に俺は頬を緩めた。

誰だろって感じで美咲を見つめる香恋。

初めて見る美咲に香恋は首を傾げてジッと美咲を見つめていた。


そして香恋はお母さんから葵ちゃんの後ろへと向かい、


「…あ、こんにちは」


美咲が屈んで言った言葉に香恋はスッと葵ちゃんの後ろに隠れた。

その行動が物凄く面白くて、可愛い。

つか、いつもの香恋じゃねぇだろ。

いつもならずっと喋ってんのに、何おとなしくなってんだって思う。


だからその光景を見て俺は思わず苦笑いが漏れた。
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