Existence *
「香恋。…美咲おねぇちゃん」


葵ちゃんがそう言って、香恋の腕を引っ張ると、また可愛い顔が姿を現す。

だけど未だに不思議そうに見つめる香恋はずっと首を傾げて困った顔をしていた。


「あのさ、私何も聞いてなかったんだけど」


不貞腐れる様に美咲は顔を顰めて葵ちゃんを見ると、葵ちゃんは苦笑いをしながら香恋の頭を何度か撫ぜていた。


「だって美咲、連絡してくれないし。いつもいつも忙しそうだったから…ごめん」


ほんとそれ。

美咲の連絡しないのは葵ちゃんも承知の上って事か。

葵ちゃんは申し訳なさそうに自分の顔の前で両手を合わせ、そして苦笑いを漏らした。


「ま、別にいいけどさ。可愛いね、香恋ちゃんだっけ?葵がつけたの?」

「うん、そう」


葵ちゃんが微笑んだ後、顔を除かしていた香恋の視線が俺で止まる。

香恋と目が合って微笑むと、香恋が嬉しそうに俺に近づき、そして目の前で蔓延の笑みを漏らした。

そして香恋の両腕が高く高く伸びる。

必死で背伸びをして俺に笑顔を向けた。


「抱っこか?」


香恋の視線に合わせてしゃがみ込んだ俺に香恋は微笑んで抱きつき、香恋の頬が俺の頬にペッタリとくっついた。


「はいはい」

「きゃははっ、」


抱きかかえて立ち上がると、香恋の可愛い声が辺りを響かせる。

ギュッと俺の首に両腕を回した香恋は、


「翔くん、好き」


そう俺の耳元で嬉しそうに微笑んだ。

その言葉に俺は思わず苦笑いを漏らす。


そんな声など美咲には届いてないらしく、案の条、美咲は不思議そうに俺たちを見て首を傾げた。
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