Existence *
「はい、どーぞ」

「ありがと。…なぁ?」


俺に再び背を向けて行こうとする旭を呼び止める。

振り返った旭が俺を見つめた。


「どしたんすか?」

「ここにさ、あの女来る?」

「あの女?」

「アイツだよ、リア」

「あー…リアさん?俺は最近見てねぇっすね」

「そう」

「なんかありました?」

「別に」

「あ。おかわりの時、呼んでくださいよ」

「あぁ」


小さく呟き視線を旭から避け、酒を飲んでタバコを咥える。

ここに居ても会えねぇってことか。

でもどうにかしてアイツには会わねぇといけない。


むしろ客のリアとしか見てなかったからアイツがどこに居るとか、どこに住んでいるとか、どこで働いているのかも全く分からない。


流星に、聞くしかねぇか。

アイツなら何かしら知っているに違いない。


このままリアに会わずにって事は、絶対に出来ない。

美咲に何を言ったんだろうか、アイツは…


ほんと余計な事しすぎ。


正直、美咲からあんなことを言われるとは思ってもみなかった。

そうしたいほど俺とはこれ以上一緒に居れないって事、か。


グラスに入った酒を一気に飲み干し、そしてまたお代わりをする。

家でも酒を飲んできた所為か、気分が悪い所為か、考えてばかりしている所為か、頭が重い。


短くなったタバコを灰皿に消し、そしてまた新たにタバコを咥えてジッポを掴んだ。

カチンッと奏でた音を鳴らし、火を点ける。


あのまますんなり受け入れるのではなくて、もっと美咲を説得するべきだったと今更ながらに後悔する。

なんであんな簡単に美咲の意見を尊重してしまったのだろうか。


美咲が流した涙が頭の中を過る度、深く思いため息が吐き出される。
< 224 / 247 >

この作品をシェア

pagetop