Existence *
「おぉ。そうそう百合香から陽ちゃん、陽ちゃんって呼ばれてた。ちなみに沙世からも陽ちゃんって呼ばれてる」

「ハハッ、そうなんすか?」

「俺、忘れられてなかったわぁー。店の名前で思い出してくれたん?」

「いや、全く。その名前の由来も知んねぇっすけど、肉で思い出した」

「肉ってか?どう言う思い出しや」


あははと笑う新庄さんに「えー」って優香の苦笑いの声が隣から漏れる。


「多分、あれ俺が小学生の時だったと思うんすけどお袋が友達の陽ちゃんが翔の為に美味しいお肉食べさせてくれるからーってすげぇ語ってたんすけど、言うだけ言って食わせてもらってねぇって言うオチですけど」

「いやいや、お前食ってるよ。沙世から貰ってんだろ、高級肉」

「は?もしかしてあれ新庄さんからっすか?あの木箱のお肉」

「そうだよ、俺からだよ。お前に食わせてやりてぇと思って」

「いやいや、分かんねぇっすよ。沙世さんも何も言わなかったし」

「ここに連れて来いって言ってたんだけど、忙しくしてるって聞いてたからな。しかも今日来るなら来るって言えよ、もっとフルコース用意しとくのに」

「いや、もうそれだけで十分っすわ」


目の前で焼かれている高級のステーキ。

普段、こんなものを味わう事もない。


「百合香にさ、食わしてやっからなーって言ってた時はさ、海外で料理の修行してたからほとんど日本に居なかったんよ。色んな所いって学んでさ、」

「……」

「丁度百合香が亡くなった時、俺フランスに居てさ亡くなったって聞かせれた時は、もうとっくに葬儀も何もかも終わった後だったんよ」

「……」

「俺丁度その頃、フレンチのコンテストみたいなので毎日勉強づけでさ、試験が百合香が亡くなった日だった。沙世にさ、言われたんよ。百合香が俺には言うなって。試験があるからもし私が亡くなってもすべてが終わった後に知らせてって」

「……」

「ほんとアイツらしいけど最後会えなかったのが心残りでな。で、ここの名前もフランス語で友情って言う意味」

「…そうなんすか、」

「百合香が残してくれたんよ、この名前。いやぁ、それにしてもほんまに翔と会えて嬉しいわ」

「ねぇ、新庄さんも知ってるでしょ?翔のヤンチャっぷり!百合香さん困ってたじゃん!」


優香が不満満開の様に吐き出すと、新庄さんはクスクス笑いだす。
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