Existence *
…――――

「…くん、翔くん、」


朦朧な意識の中から聞こえてくる声。

揺すられる身体にうっすら目を開けると、目の前に沙世さんの顔が移り込む。


「大丈夫?凄い咳してたよ?起きてこないから心配したじゃない」

「あー…今、何時?」

「20時過ぎてる。ご飯、食べなよ?」

「ん、」


気怠い身体を起し、立ち上がる。

リビングに向かってすぐ、冷蔵庫から水を取り出し、乾いた喉に一気に流し込んだ。


「実香子ちゃんはなんて言ってんの?」

「え、実香子?」


椅子に座り、目の前に置かれた料理。

箸を持って、目の前の沙世さんに視線を送った。


「え?実香子ちゃん、まだあの病院でしょ?」

「あぁ」

「いつまで入院って?」

「さぁ…」

「治療法とかさ、薬の事とかさ、」

「さぁ…」

「さぁ…って聞いてないの?」

「聞いてない」

「なんで?」

「なんでって聞く必要ある?」

「あるでしょ?自分の身体の事なんだから。もぉ、私が行って実香子ちゃんに聞いてみる」

「いや、いいから」

「どっちみち翔くん送らなきゃ行けないから」

「タクシーで行くからいいって」

「ううん、送るわ」


ちょっとめんどくさかった。

でもここまで言ってくる沙世さんにもう何を言っても無駄だと感じる。

ほんと、母親かよ。

いや、もしかしたら母親よりひどいのかも知んねぇ。


「もう、好きにして…」

「うん、好きにするわ」


そう言った沙世さんは微笑んで、俺はその微笑みを避けるように箸を進めた。
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