Existence *
ホントに送ると言った沙世さんは次の日の昼過ぎに来た。

病院に着くなり速攻沙世さんは実香子と話してた。

そんな2人を無視して、案内された病室に入り、ベッドに寝転ぶ。


また、ここか…

と思いながら真っ白な天井を見上げて一息吐く。

でも5年前の気持ちとは全く違くて、今の気持ちの方が楽だったりする。

誰とも連絡を取らずに、ここで暫く何も考えたくないと思ってしまった。


「…翔くん、良かったね。また実香子ちゃんが担当だって」


入ってきた沙世さんが嬉しそうに隣に居た実香子に視線を送った。


「別に誰でもいいわ」

「実香子ちゃん以外、誰もあなたの担当になんかなりたくないでしょ?言う事聞かないんだから。ねぇ、実香子ちゃん?」

「ほんとですよ!病室で喧嘩はするし、もう…ほんとに」


思い出したかの様に実香子がため息交じりで吐き出すと、沙世さんが大きな声を出した。


「えっ!この子そんなことしたの?」

「蓮君と喧嘩してたんですよ、点滴してる最中に引っこ抜いて大声あげて…」

「えー…もう何してんのよ」

「つか、いつの話してんだよ、ほら沙世さんもう帰っていいから」


手で追い払う俺に沙世さんは顔を顰める。


「ほんっと可愛くないんだから」


小さく呟く沙世さんに、実香子がクスクス笑いだす。

じゃあ、また来ると言って帰って行った沙世さんに頷き、俺は視界を遮るように腕で目を隠した。


「翔くん、夕方に一回目の点滴あるから」

「ん、」

「今どこか痛いところとかある?」

「ない」

「何かあったら言って」

「ん、」


実香子が出て行ったあと、ポケットに入れていたスマホを取り出し隣のテーブルにそれを置く。

そして俺は瞼を落とした――…

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