Existence *
この入院生活に少しづつ馴染んできて、この生活が当たり前に思うようになってきてた。

ほぼベッドの上。

この時間を少しでも無駄にしないように最近ではパソコンを広げて、次の仕事に没頭していた。

こんな時間がないと出来ない事。

多分、トビの仕事をしていると、ここまで次の仕事に時間を継ぎ足すことはなかった。


コンコンとドアをノックする音が聞こえる。


パソコンを見つめて手を動かしながら「はい」と返事を返す。

ガラッと開いたドアから徐々に近づいて来る足音。


「…久しぶり、翔」


その女の声で俺は顔を上げた。

目の前には二人の女。

…誰?と思う俺は今までの店の女を顔を思い浮かべる。


だけど目の前の女と一致する女などなく、むしろあの業界に居た頃の女の顔はほぼ覚えている。


「…アカネです」


ジッと見つめる俺に小さく呟かれた名前。

その名前でハッとした


あかね?

え、あかねって。

あのアカネだろうか。

そう言われたら、なんとなくあの時と似てる。


「…え?何でここに?」


開けていたパソコンを閉じる。

正直、驚いた。

あれから何年?

13~14年は経つのだろうか。


「何年か前にこっちで住んでるんだけど、最近翔の事聞くようになってさ、入院してるって聞いたから」

「へぇー…」


正直、俺の話って何って思ってしまった。

むしろ誰から俺の事を聞いたんだろうと。


「だからなんか心配になって来たの」

「そう…」

「ほんと久しぶりだね、もう14年くらい経つのかな?」

「あぁ、そだな」

「全然変わってないね」

「いや、普通に変わんだろうが。もう俺29だし」

「うん、私もだよ」


そう言ってアカネはクスクス笑って俺を見た。
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