Existence *
「翔くん、久しぶりだね。私の事、覚えてんの?」


笑っているアカネの隣で俺を見て口を開く。


「京香だろ。茜と居る時点で分かったわ」

「さすが翔くんっ、」

「はい?」

「いや、懐かしいなぁって思って。ここに来たのも茜が翔くんに会いたいって言うから――…」

「ちょ、それは言わなくていい」


茜が京香の腕を掴み、困った様に首を振ると京香はクスクスと笑みを漏らした。


「ねぇ、それより翔は大丈夫なの?入院してるなんて聞いたからビックリしちゃって」

「そんな重い病気じゃねぇから大丈夫」

「いつまで入院するの?」

「俺の体調次第つってたから分かんねぇわ」

「そうなんだ」


俺にも正直分からなかった。

実香子が言うには本当に俺の体調次第で、でも3月には退院できると言っていた。


暫く話した後、茜と京香はこの病室から出て行った。

誰を通して、ここまで来たのかは不明だが、正直、俺はもうあの頃の事を忘れていた。

付き合っていたのも学生の頃で、ほんと自然にお互いがお互いに離れたってくらい。


大した恋愛などしてない時になんとなくで付き合った感じで、それも嫌いになって別れたとかじゃない。


だからこのタイミングで現れた事に物凄く驚いた。

目の前の机に置いていたパソコンを引き出しに仕舞う。

その時に見えた本を手にして引っ張り出した。


これでも読んどけって流星に渡された本。

いや、むしろ沙世さんから。

肝臓に関する本。

これを読んだところでどうなるんだろうか。


自分の身体の事、理解して。とか言っていた沙世さん。

ほんと、お節介すぎんだろ。


一度もまだ読んでいない本。

読んだところでって思うのが正直なところで。

読んだところで何もない。


ペラペラ捲って、理解することもあれば、よくわからない事もある。

ほんっと、どうでもいいな、この本。

なんて思っていると、


「翔、お届け物」


ドアが開いた瞬間に流星の声が飛んできた。
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