Existence *
「芹沢さん、お変わりないですか?点滴しますね」


俺の顔を見てクスリと笑った実香子がやけにムカつく。


「あ、じゃあ…翔またね」

「あぁ」


頭を下げて病室を出ていった茜の背後に実香子は視線を向けてすぐ俺を見る。


「大丈夫ですか?痛くないですか?」


差し出した腕にアルコールをし、針を刺す実香子に顔を顰めた。


「やめろや、その態度」


俺の言葉に実香子はクスクス笑いだす。


「だって、ほんっとに翔くんの周りは女の子しか居ないんだもん」

「そんな事ない」

「そんな事、あるよ。さっきの人は誰?」

「誰でもいいだろ」

「あ、店の女の子?」

「違う」

「へぇー…ねぇ、美咲ちゃんとなんかあった?」

「はい?」


思わず実香子を見てしまった。

一瞬見た俺にフッと笑みを零す実香子は点滴の落ちる速度を確認する。


「会った事ないけどさ、あの人の前に出ていったのって美咲ちゃんだよね?」

「……」

「葵ちゃんから写メ見せてもらってたからすぐに分かった。あ、美咲ちゃんだって」

「……」

「実物、物凄く美人じゃん。で?さっきの人となんかあったの?」

「なんで?」

「そこで泣いてたよ?」

「は?」

「泣いてたって言うより泣きそうになってた。表情がね」

「……」

「翔くんがモテるのは仕方ない。でもね、女がらみで泣かせるの辞めなよ」

「は?いや、むしろ俺が――…」


そこまで言いかけて言葉を止めた。

むしろ俺が既に振られてもう終わってるって。


泣きそうになってたって、なに?

別に俺、なんもしてねぇし。

そこに泣く必要があんの?

なんもねぇだろ。


アイツが俺に別れたいって言って、別れて。

そんで勝手に来て、泣きそうになって。

別れて俺に気持ちなんてイチミリたりともねぇくせに、身体の事心配して。


まじで意味わかんねぇわ。

俺だって忘れようと必死になってんのに急に現れて、アイツが何をしたいのかも分からない。
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