Existence *
…―――

どれくらい時間が経ったのだろうか。

1時間。いや、もうすぐで2時間は経とうとしている。


「…やっぱ翔じゃん!」


その、どれくらい時間が経ったのかも分からなかった時。

ドアを開けて明るく入って来た女に視線を向けた。


「…は?だれ?」


咥えていたタバコのまま呟き、顔を顰める。


「忘れるとかなくない?どれだけ私と寝たと思ってんのよ」


そう言いながらモニターに地下の風景が映っているテレビ画面を女はプツリと消し一瞬にして静けさが増す。

茶色のボブの髪を耳に掛け、そこから見えたピアスがきらりと光る。

その女は俺の横に座って、フッと微笑んだ。

派手。と言うか、恰好がエロイ。

どんだけ気合入れてんだろうと思うほどの化粧で元の素を消すんだろうか。

見つめて来る女と過去を照らし合わせる。


「久しぶり。…会いたかった」


そう口角を上げて微笑んでくる、その声に――…


「…もしかしてサクラ?」

「そう。思い出してくれたんだ」


そう言ってサクラはクスリと笑った。


「声で分かった」

「なに声って。まぁ、あんなに寝てんだもんね、忘れるわけないか」


ハハッと笑ってサクラはテーブルにある俺が飲んでた酒を口にする。


「うわっ、きっつ、」


そう言ってサクラは顔を顰め唇を拭った。


「ところでなに?」

「翔が飲み歩いてるって情報聞いてさ、ずっと探しての」

「……」

「じゃあさぁ、ここに入ってくの見たって人が居てさ、連絡もらった」

「で?…なに?」


そう問いただした俺にサクラは俺の顔を覗き込んで口角を上げた。


「ずっと会いたかったんだよねぇ。ホストになってから相手してくれなかったじゃん」

「……」

「もう辞めたんでしょ?じゃあさ、久々にしよっか?」

「…はい?」

「やっぱ翔の顔好きだわ。あの時からずっとそうだったけど。私、男前とするの好きなんだ」

「何言ってんの、お前」


馬鹿らしくなって、タバコを咥えたまま笑みを漏らす。


「あれ?いいよって言わないんだ。昔は簡単にしてくれたのに」

「お前相変わらずヤルの好きだなぁ」

「それは翔もじゃん」

「お前よりかはマシ」

「あー…もしかして彼女居んの?」

「いねぇよ」

「だったら別にいいじゃん。ってか別に私は翔に彼女が居ても構わない」


顔の近くて囁かれてフッと笑みを向けられる。

そしてその唇が俺の唇を奪った。
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