Existence *
「なんか物凄い綺麗な人だったね」


美咲が背中をみながらポツリと呟く。


「つかアイツ、2人目妊娠してるっつってたな」

「え、そうなの?全然わかんなかったけど」

「確かに。つーかさぁ、他の奴らもだけど美咲に会わせろってうっせーんだよな」

「そうなの?」

「俺は会わせたくねぇけど。根掘り葉掘り聞かれるのがオチだからな。めんどくせぇわ」

「めんどくさいって、」


美咲が苦笑いして俺を見つめる。


「俺のダチはめんどくさいって事」

「なにそれ」


クスクス笑う美咲に「ちょっとタバコ吸ってきてい?」出入り口に向かって指をさす。


「うん。じゃあちょっとそこの本屋行ってる」

「ん、」


美咲と別れて俺は外に出てタバコを咥えて火を点ける。

まさか、こんなところで梨々花に出会うとは思わなかった。

梨々花と会った所為でなんかすごく嫌な予感がすると思ってしまった。


また美咲の事をいちいち他の奴らに聞かれるに違いない。

ため息交じりに吐き出したタバコの煙が辺りを覆いつくし、その煙から避けるように顔を背けた


吸い終わって、美咲と出会い、ビールと食材を買って車に向かう。

助手席に座った美咲の膝の上に置かれている袋を見て、そう言えば、と思い出した。


「何買った?」

「絵本」

「絵本?」

「そう絵本。香恋ちゃんに」

「あー…。なんかいいのあった?」

「これボタン押したら色んな動物の鳴き声がするんだって」

「へぇー…すげぇな」


嬉しそうな見せて来る美咲に俺は頬を緩める。

そういや美咲が帰った来た日以来、香恋と出会ってねぇわ。


「明日、行こうかな。葵んちまだ知らないし」

「え?明日、仕事は?」

「行った帰りに行こうかなって」

「あー…んじゃあ俺の仕事終わったら迎えに行こうか?どうせ夜までいんだろ?」

「うん、多分」

「じゃ、電話する」

「うん」


そして次の日、やっぱり俺の嫌な勘は当たっていた。
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