Existence *
仕事場に着くと、真っ先に蓮斗が俺の顔を見た瞬間に笑みを浮かべて来た。

その視線を気づかないふりをして、通り過ぎる俺に蓮斗は「…はよ」そう言って更に笑みを浮かべる。


「あれ?無視?」


背後から蓮斗の声が飛び、俺は仕方なく足を止め振り返った。


「なに?」

「おはよっつってんの」

「はよ」

「梨々花から聞いた」


ほらな。

やっぱりそうなるだろうと思ってた。

絶対、こいつは言ってくるだろうと思った。


「何が?」

「美咲ちゃん…」

「…が、なに?」

「梨々花が美咲ちゃんの事、めっちゃ美人って言ってた。噂には聞いてたけど、あそこまで美人だと思わなかったって言ってた」

「あぁ、そう」

「あんな美人だと他の男に持ってかれるよっつってた。翔くん、大丈夫って心配してたぞ」

「……」


つかなにその心配。

確かに美咲が他の男に持ってかれる事はなくはない、だろう。

5年の間に美咲は変わってた。

俺が想像してたより遥かに超えてた。

俺の傍にこれからずっと居るだろうって言う確信もない。


でも、だからってそんな心配されたくねぇわ。


「なぁ、今度俺にも会わせて」


蓮斗が不快に笑みを漏らせる。

その笑みが何かを思ってる感じで。


「会わせねぇよ」


俺は素っ気なく呟いた。


「冷たいね、お前は」

「会ってどーすんの?」

「とりあえず忠告しとこっかな。あ、警告?」

「はい?なんの?」

「もしこの先、結婚することがあったとして、お前が不倫した時、俺に依頼してきてねってやつかな。まぁ浮気でもいいわ」

「は?何言ってんの、お前」

「俺はお前から慰謝料とりまくるように捜査する」

「馬鹿な事言ってんなよ」

「お前の女絡みは怖いからなぁ」

「はいはい、なんとでも言っとけ。なぁ、それより梨々花ほんまに妊娠してんの?」

「なんで?」

「全然分からんかった」

「あー…、まだ安定期過ぎたとこだし」

「あぁ、そか」


その日、仕事を終わらせた俺は一旦家に帰ってシャワーを浴びた。

着替えて、美咲を迎えに行こうとした時、不意にスマホが鳴りだし俺の足が止まる。
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