Existence *
「いっそのこと、美咲ちゃんとのガキでも作ってさっさと結婚しちまえ。それがいい一番の効率だな」

「効率?」

「追っかけて来るもんも来なくなるって事。帰ってガキでも作っとけ」

「はい?何言ってんの?」

「あれ?お前の事だから、そうすっかなーって言うと思ったらまさかの否定かよ」

「そんな考え全くない。仕事優先してぇの」

「仕事、仕事、仕事。お前の頭は仕事しかねぇのかよ」

「そうだな」

「へぇー…」


呟く流星に軽く手を上げ、その場を離れる。

タクシーを拾ってマンションに帰り、俺は倒れるようにソファーに身を預けた。


もちろん優先順位は美咲にある。

美咲に結婚と言うワードを出したけれど、正直今じゃない。

そんな事を思っていると無意識に俺は美咲に電話をかけていた。


「…はい」

「あ、出た」

「出たって、なに?掛かってきたら出るよ」


電話越しから笑って聞こえる美咲の声。


「いや、授業中かなーって思って」

「休み時間。どうしたの?」

「今日来るかなって、」

「行ってもいいけど遅くなりそう」

「何時?」

「うーん…終電には帰るつもり」

「迎えに行こうか?」

「ううんいいよ。何時かわかんないし」

「そか。じゃあ無理して来なくていいわ。気をつけて帰れよ」

「うん」


電話を切って、フッと息を吐き捨て気持ちを切り替える様に俺は沙世さんから受け取った資料に目を通していく。

途中、夜ご飯を買いにコンビニに行き、その後もひたすら資料を読みつくす。

時間を忘れるくらいに没頭し、気づけばもうすぐで24時を過ぎようとする。


没頭し過ぎたせいで、眠さも限界になりシャワーを浴びる。

本当はこんなに勉強せずに土壇場で何も知らないまま飛び込むことだってできる。


だけど俺には出来なくて。

土台もないのにちゃんとしたものを作り上げていくことは出来なかった。


なんだかなー…

ほんとそこは職人気質と一緒だと思えばいいのだろうか。


土台をちゃんとしないと進めねぇって事か。

そう思うと、自分自身に苦笑いが漏れた。
< 67 / 119 >

この作品をシェア

pagetop